2021.1.6(水)

またやってしまった。
つくづく、あたしは優しくない。

できるかできないかは、やってみなければ判らない。
母美代さんの常套句だ。

この考えには、あたしも同意する。
でもそれは、健康で物事の判断ができる状態でのこと。

やればできるかもしれない。
でも、必ず途中でできないことが出てくる。
それは、これまでにも何度もあった。
その度に、「でぎね、やってけろ」と言われ、「だから最初からできなことを認めた方が楽でしょ」と、言い続けてきた。

認知症だから言われたことを忘れるの・・・
それとも、母なりのプライド・・・

昨夜から今朝にかけてのあたしは、とてつもなく嫌な人間になっていた。
・・・できると思っているのなら、最後までやればいいじゃん。あんたなんかどうなっても知ったこっちゃない・・・

美代さんは、動かない身体で何とかパジャマに着替えようとしていた。
あたしは観て見ぬふりをしていた。

が、結局できずに「なぁ、助けでけろ」と懇願してくる。
それでも知らんふりを通した。
夜間用尿取りパッドをせずに、パジャマの下を穿かずに寝ようとしていた美代さんを見て、イライラはマックス。

脱いだ衣類は、ベッドの上にあった。
今日も着る気でいたのだろう。
その服を手に取り、思いっきり美代さんめがけて投げつけた。
一応、顔ではなく胴体をめがけたが・・・。

その後はスリッパも投げつけた。
手元が狂い、幸いにも美代さんには当たらなかった・・・が、当たらなかったことが、あたしには悔しかった。

あたしの顔は、たぶん鬼の形相だったはず。
それでも美代さんは怯えることはなく、それどころか、なぜあたしがこんなにも怒っているのかが理解できずにキョトンとしている風だった。

尿取りパッドをあてがいパジャマを穿かせ、勝手に寝ればとその場を去った。
いつもはベッドに寝かせ、中心になるように身体をずらしてあげ、布団も肩まで隠れるようにかけてあげているが、一切やらずに知らんふりを通した。

布団を掛けられないから掛けて欲しいと言われたが、「お昼寝のときには自分で掛けているよね。あたし知ってるよ。自分でできることはやるんでしょ!やればいいじゃない」
美代さんは渋々布団を掛けていた。

煌々と電気は点けたまま。
ベッドの上に置いてあるスイッチを切りに、美代さんの枕元を覗くと、丹前を首に掛けることができないままでいた。
それでも放って置いた。とことん、優しくなれないで居た。

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今朝も、自分でやってみると言い、着替えさせて欲しいとは言って来なかった。
デイケア日は普段着ではない。
何を着て良いのかも判断できずに、服を出して欲しいと言う。

肌着から靴下まで全て並べてやったが、結局できないのだ。
リハパンを交換することも忘れているし、脱ぐはずの肌着の上に新しい肌着を着ようとしていた。

できることは自分で。
でも、できないことは手助けが必要。
そんなことは百も承知している。
「助けでけろ」が出た際にやってあげればいいことなのに、それをするのがとてつもなく嫌なことに感じてしまう。

あたしは心を病んでいるのだろうか・・・
それとも、単なる冷たい人間なだけなのだろうか・・・

あたしの世界の中心には美代さんが居る。
常に、美代さん中心に物事が動く。

あたしは何者なのだろう。