思っていること、考えていることをが、言葉にならない。

「あ~、クソ。なしていわさらねんだが!」
(どうして、言葉に出ないのか)

認知症のガイドブック(専門書)には、患者が言わんとしていることを、察してあげるようにと書いてある。

昨夜の晩ご飯時のことです。
豚の生姜焼きと、アボカドサラダを作りました。
しゃぶしゃぶ用の薄切り肉を使用したので、硬くはなかったようです。
アボカドサラダには、ツイストマカロニ、みじん切りの皮を剥いたパプリカと、同じようにみじん切りのセロリを入れ、マヨネーズで和えた。隠し味には、ワサビしょう油ドレッシングを少々。
全て、入歯で硬い物が食べられない美代さん仕様です。

スポンサーリンク


「肉、硬い?」


玉ねぎと一緒に炒めた肉でしたが、どれが肉なのか判らない様子。
母の癖である、お箸で食材をツンツン(ポチポチ)と突き、肉の存在を確かめていた。

「ねぇ、お箸で突かないで、行儀が悪いよ」

食事の度に、突く癖。
86年物、直らないことは判っていても言わずにはいられない。
お肉も、サラダも軟らかいので食べられると言い、8割方食べ終わった頃に箸が止まった。

「まだ残っているけど、ご馳走様なの?」

「かだくて食べれ。のごした。捨てるじゃ」

軟らかいから大丈夫と言い、もう少しで完食だと言うところで「硬い」の言葉。

「散々食べて今更硬いの?いいよ、自分で棄ててね」

キッチンに持ってきた皿。
食器棚から、自分用の小さな小鉢を出し、移そうとしていた。

「何してるの?硬くて残したんでしょ?お腹がいっぱいになった訳ではないんでしょ?皿汚しだから捨ててよ」

「オレは貧乏のながでいぎできた。物、捨てれね」

貧乏農家の子沢山の長女として生まれてきた母。
捨てられない症候群の昭和一桁生まれ。
気持ちは解るけど、硬くて残したのなら小鉢に移したところで結局食べずじまいでしょ。それとも、お腹がいっぱいになったということ?
残したおかずは、あたしが食べれば良かったの?
箸で、散々ポチポチしていたおかずを・・・。

小鉢を食器棚に戻し、あたしが捨てた。
なんで捨てた?とは、言われなかった。

美代さんの食べ方にはムラがある。
好物が出た時には、少々噛み切れなくても完食することが多い。
昨夜は、嫌々の食事だったのかもしれない。

145510518fc6e9b316598ca4b3f2e4e4_s

それにしても、アボカドサラダは初めてではなく、何度も食べている。
毎回、美味しいと言い完食していた。
美代さんの好みのおかずを作るのは、疲れる。

あたしは気遣いが足りないのだろうか。
元々好き嫌いの多い母だけど、認知症になり我が儘と言えることが多くなったように思う。
これも、脳のせいなのか・・・。

真意は何処にあるのか。
本当に硬かったのか・・・
それとも、お腹がいっぱいだったのか。

母が、何を想い何を考えているのか、
娘のあたしが、察してあげなければならないのだろう。

でも・・・疲れる。

スポンサーリンク