あたしには娘がふたりいます。

むすめ達を呼ぶ際、たまに呼び間違いをします。
自分ではちゃんと呼んでいるつもりなのに、間違う。
でも、名前はちゃんと憶えています。

母美代さん。
孫むすめ達の話題になり、「ユカ」「サキ」と順番に名前を言います。
その順番の中にあたしの名前も含まれます。

「おいおい、あたしはあなたの子供だよ」

「?そだ、おめは孫でね・・・」

と、次に出た言葉はなんと!
「んと~・・・おめの名前、なたけ?」(何だっけ)

「えっ?あたしの名前忘れたの?さっき言ったじゃない!」

「んと~・・・と・と・と、・・・〇〇だ(*゚▽゚*))

「そだね・・・」

常に一緒にいるあたしの名前が出てこない。
流石にドキッとしました。

そうです。
美代さんは、自分の夫や孫・ひ孫の名前が出にくくなってきています。
一番可愛いと公言する、初孫の「ユカ」の名前が出ないことがあり、情けないと嘆くこともあります。

嘆く美代さんに向かい、痛烈な言葉を浴びせるあたし。
「あなたは忘れる病気なの。脳の中にシミができて、そのシミが記憶を食べちゃうの。だから仕方がないの」

「そだのが・・・やんたびょうぎだな・・・やはぐ治りて」(嫌な)

あたしの悪意(?)のある言葉を素直に受ける美代さんですが、治ると思っているようです。
何度も治らないと言っていますが、飛んでしまうようです。
母が、認知症の知識、物事や言葉の数を知っているのであれば、冗談でも言えないことですが、悲しいかな母には乏しく、難しいことを言っても解ってもらえないので、「シミが記憶を食べる」の表現にしています。

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入浴中に、10年前に亡くなった父が認知症だった話を持ち出しましたが、
「じっちゃ、認知症だったったてが?初めで聞いだ」

最近の美代さんは「初めで聞いだ」が、多くなってきています。
病院へは、母・あたし・長女のユカが付添い、診察室での医師の説明時には、
「オレは聞いでもわげわがらねがら、おめだじで聞いでくれ」
(訳が判らない、お前たち)

と、入室を拒みました。当時の母の年齢は、73歳。
このときの医師の説明を、自らも聞いていたら記憶に残っていたのでしょうか。
説明の内容については、あたしと長女でしっかり伝えましたが、理解力の乏しい母にはチンプンカンプンでしかなかったようです。
父と同じ病気になり、当時父に邪険な態度を取っていたことなども、すっかり忘れています。

「この、忘れるごどが少しでも善ぐなればいんどもよ・・・」
(良いのだけれど)

物忘れを自覚している美代さんは、治りたい・・・治る・・・と、本気で思っているのか。
・・・訊けません。

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認知症の親に対して「治らない」と言うのは、ネグレクト(虐待)に相当するかのもしれませんが、何度も同じ説明に疲れ果てるときはがあり、「治らない」と、口にしてしまう。

そして、聞いた本人が理解することもなく忘れてしまう。

忘れることを良いことに、ついつい言ってしまう。
そう、あたしはズルくて冷たい娘です。


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